在宅医療は携帯電話とともに

在宅サポートながさきクリニック 院長 長崎 修二

 在宅医療にそこそこ本気で取り組み始めて、もうかれこれ10年以上にはなる。初回のケアマネ試験に運悪く受かってしまったのが運のつきだった。現在の合格率≒25%なら絶対受かってないはずなのに。
 昨年7月に自分のクリニックを開業するまで10年あまり、病院や診療所で仕事をしていた。所属していた医療機関ではいつの間にか在宅医療の専門家とみなされるようになった。ついにひとりで在宅患者を80人以上管理する診療所長を仰せつかる羽目になっていた。
 在宅医療は入院医療、外来医療とならぶ医療サービス提供の場の3本柱のひとつである。だんだんと通院が困難になり、完全に寝たきりになる前の状態にある患者さんが主な対象だ。完全寝たきり状態になると家族介護負担や疾患の状態からみて、施設入所や慢性期病棟への入院が選ばれる傾向になる。ぼくはこのことを「通院困難・寝たきり未満の在宅医療」と呼んでいる。
 もうひとつの対象は、癌末期で緩和ケアを必要とする在宅看取り医療、いわゆる在宅ホスピスの領域だ。これは、展開が急だ。初往診日の翌日に亡くなられたケースもあった。携帯電話を片時も離せない。
 さて、その在宅医療、在宅看取り医療の最大のパートナーだが、いわずもがな、訪問看護ステーションである。訪問看護と仲良くしないで在宅医療を行うことは考えがたい。核家族化現象が終局形態を迎え、老々夫婦や独居高齢者が激増し「孤族社会」などと呼ばれる社会問題が発生し、地域の古い共同体が機能不全を起こしている中で、新しい共同体機能が必要になって来ている。その大きな柱が在宅医療なのだ。
 地域の患者さんのニーズに出会い、そのニーズに寄り添う新しいプロ集団の共同体、僕はそれを「出会い系共同体」と呼ぶことにしている。訪問看護ステーションと手を携えて、新しい出会いを求め、今夜も携帯電話を離せない。
 

 

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